高度の専門性と調査能力を活かした社会的正義の実現 医療事故・犯罪被害者支援・刑事弁護・コンプライアンス・相続・各種民事事件
HOME > お知らせ > 取扱いと進め方 > 4-2、会社資金の不正使用の場合に成立する犯罪と立証事項

4-2、会社資金の不正使用の場合に成立する犯罪と立証事項

 

会社経営者や個人事業者主の方から、多く相談を受ける内容です。個人事業の場合も概ね同様です。

 

会社資金の不正使用で多いパターン

1 銀行口座から現金出金し、私的用途に使用 →横領又は窃盗(出金する権限がない場合)

2 取引先から預かった売上金を私的用途に使用 →横領

3 クレジットカード(法人カード)を私的使用→使用した相手との関係での詐欺、理論的には会社資金の背任(実務上は立件しない)

 

(会社が破産した場合には、以下が加わる)

4 破産状態となって以降に特定の債権者に返済・・・偏波弁財(破産法上の免責不許可事由)

5 上記事実を破産管財人に秘匿、一部の資産を管財人に秘匿・・・破産法上の詐欺破産罪が成立する場合がある。

6 個人破産の場合は、相続財産の秘匿も詐欺破産となる。

 

立証上の問題点

1 個々の違法行為を特定し、その時期・金額・支払先を証明する必要がある。よって、具体的には、違法とする資金の流れについて、銀行口座からの出金の日、私的使用の時期・場所・用途(相手方)等の証明が必要。記録から使用の時期・金額・支払先が特定できるクレジットカードの不正使用事案を除くと、私的使用の特定が困難。

★捜査機関は、通常、被害者側が上記点に関する客観性ある証拠を提出しなければ、証拠不十分として被害届・告訴を受理しないので、被害者側は非常に苦労する。

例えば、会社オーナー(株主)の知らない間に代表取締役である雇われ社長が会社の銀行口座から多数回にわたり出金し、使途を明らかにしないという場合、概括的な事実だけではダメで、出金の時期・金額を通帳等で明らかにし、かつ、私的使用であることが購入記録や購入先の証言等の何らかの証拠で明らかになること(例えば、10万円出金した日にサラ金に10万円返済しているとか、高額の買い物をしている等)を要求する。

 

2 クレジットカードの場合、これまでの裁判実務では、使用する相手方(クレジットカードを示して購入する店等)との関係での詐欺を認めるが、クレジットカードの名義人(会社)を被害者とする犯罪の成立を認めないという、法律上の問題がある。

理論的には、会社財産を違法に減少させる背任に当たるはずであり、民事上、会社に対する不法行為が成立することは確か。

 

3 横領と背任は、元々の概念が重なるため、その区別は微妙であり、法律実務家であっても、的確に判断するのは困難であるし、人によって判断が分かれる場合がある。横領と特別背任罪(商法上の背任罪)は、刑罰も公訴時効も同じなので、区別に神経質になる必要はない。私見では、横領背任罪に統合すればよい。

 

PAGE TOP