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詐欺被害の被害回復の手順

 

詐欺被害に対する刑事告訴と損害賠償請求は、非常にご相談が多く、かつ、容易でない事案が多いので、検察官及び弁護士としての経験に基づくポイントをまとめておきます。

要点

第1 詐欺の立証事項は、民事と刑事で共通

第2 立証事項は、1 資産の授受(資金移動)の事実、2 虚偽及び因果関係(嘘を信じたために、資産を交付したこと)、3 犯意(最初から騙し取るつもりであったこと)

第3 証明のハードル 刑事でも民事でも、要求される証明の水準が一般人の感覚と比べて格段に高い

第4 経済的被害の回復は最重要で最難関

 

第1 詐欺の立証事項

詐欺の立証事項は、民事と刑事で共通です。ただし、民事は、故意の証明ができなくても、詐欺には当たらない違法行為として、債務不履行責任又は契約責任を追及できるので、その分ハードルが低いです。賠償額は、詐欺でも不法行為又は債務不履行でも変わらないので、刑事処罰を必須目的としないのであれば、詐欺に拘る必要はありません。

第2 立証事項

詐欺の立証事項は、1 資産の授受(資金移動)の事実、2 虚偽及び因果関係(嘘を信じたために、資産を交付したこと)、3 犯意(最初から騙し取るつもりであったこと)であり、多くの事案で、3の立証が最も問題になります。意外と証拠不足が多いのが1です。1は、性質上、客観的証拠が要求され、1の証拠が不十分な事案は無理です。1の証拠がある部分に限定して、法的手続きの対象とすることになります。

3の犯意に関しては、加害者は、多くの事案で、返すつもりだったとか、貰ったなどと弁解するため、返済の財源(銀行口座に預金があるとか)に関する話が嘘だったとか、複数被害者に同様の話をして被害を重ねていたなどという、事実を示し、弁解が嘘であり、最初から騙し取るつもりであったことを証明する必要があります。

具体例として、以下のような工夫をした事案があります。いずれも、非常に苦労しました。

取込詐欺(大量購入した商品を転売し、行方をくらます)・・・行方をくらました事実と、同種被害の反復を証明

工事代金詐欺(工事代金の架空請求・過大請求)・・・複数の工事状況を調査し、やってない工事の代金であることを証明

投資詐欺(資金を預かり、元本保証、高配当を約束)・・・関係者の供述と口座の動きから、資金運用せず、費消していたことを証明

恋愛詐欺(女性が恋愛を装い、男性に偽ブランド商品を高額で販売)・・・ブランド輸入元に照会し、偽物であることを証明

 

第3 証明のハードル

立証に当たり、常に問題となるのは、刑事でも民事でも、要求される証明の水準が一般人の感覚と比べて格段に高いことです。多くの被害者は、当初は、証拠十分と考えており、自信満々ですが、警察や弁護士に相談する中で、証拠不足を思い知らされます。統計はありませんが、多数のご相談を受け、その一部を受任してきた私の印象では、被害者が警察に相談した事案のうち(弁護士委任事案を含めて)、告訴受理された事案は、2割程度かそれ以下と思われます。

 

第4 経済的被害の回復は最重要で最難関

苦労して証拠収集し、刑事告訴が受理されたとしても、民事訴訟で勝訴したとしても、経済的被害が回復される保証はなく、限界が大きいです。成功率を高めるため、返済原資の調査(預金・不動産等の資産、収入)を進め、どこかのタイミングで、仮処分・強制執行などの手続を行う必要があります。 返済原資の調査は困難ですが、これなくして被害回復はありません。返済原資がないことが確定的なら、被害回復は不可能です。

 

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